FC2ブログ
アヴェスターにはこう書いている?
本を読んでいて気になったことなどを徒然なるままにメモしておくブログ。書評というより「読書メモ」。
プロフィール

ツァラトゥストラ

Author:ツァラトゥストラ
「ツァラトゥストラはこう言っている?」の姉妹編。日々読んでいる本から気になった箇所をピックアップして自由にコメントするブログ。

FC2ブログランキング

FC2ブログランキング

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

FC2カウンター

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

原暉之 編著 『日露戦争とサハリン島』(その2)

 ただし原と寺内の対立について、原の言葉どおりに樺太を「内地同様」とするか「台湾類似」とするかという統治方針の相違だとみるのは単純に過ぎる。春山明哲が指摘するように、この対立の要因はむしろ、新たな統治機構をめぐる勢力争いと、その統治機構に与えられる権限の問題であった。樺太庁設置をめぐる議論のそばで、現に台湾総督府が武官総督制や律令制定権(事実上の委任立法権)をはじめとする制度によって陸軍勢力、ひいては元老山形有朋を筆頭とする長州閥の権力基盤と化している状況に対し、議会・政党を中心とした政治運営を目指し政友会の権力伸張に努める原敬は、台湾総督府の権限縮小に腐心していたのである。(p.221)


樺太の統治機構を台湾に似たものとするか内地に近いものとするかという対立がかつてあったが、この対立の背景には、軍や藩閥勢力が議会とは別に物事を決定できるようにするか、できるかぎり議会や政党が関与する形で治めていくのか、という権力を行使する権限を誰に与えるのかという問題と結びついていたということか。

同時に、台湾が陸軍と長州閥の権力基盤と化しているという認識は、台湾を直接語る際にはあまり語られない枠組みだったりするが、当時の日本の政治情勢の中においてみることによって見えてくるものであるように思われ、興味深い。



筆者が別稿で詳論したように、「樺太の地方制度に関する法律」(1921年法律第47号)まで樺太では地方制度の整備がなされなかった。しかも改正樺太町村制(1929年法律第2号)までは市町村レベルの参政権すらなく、衆議院議員選挙法は1945年4月になって、台湾・朝鮮とともに施行された。また樺太全域を区域とする議会は、領有期間を通じて設けられなかったのである。(p.225)


領土にしたとはいっても、そこに住む人々がいかに尊重されることがなかったかということがよくわかる。



そもそも北海道・沖縄・小笠原諸島も憲法発布の時点では衆議院議員選挙法の適用外であり、制度上は本国に含まれない属領だった。樺太庁の設置(1907年)は、台湾総督府の設置(1895年)、北海道・台湾を管轄する拓殖務省の設置と廃止(1896~97年)、北海道の本国編入(1896~1901年)からまもなく、加えて沖縄県の本国編入(1900~12年)はまだ未確定という、本国/属領の線引きと統治方式をめぐる大きな転換の途上で行われたのである。(p.226)


今年2018年は北海道命名150年とか言われているが、当時は本国には含まれていなかったということももっと認識されてもよいだろう。



 そして第二に、当初の樺太庁の実際の警察事務は支庁長・支庁出張所長が行政事務と警察事務とを兼任する形で行われ、とくに一部の支庁長と全出張所長は、警部が任用されて行政事務を兼務する状態であった。これは本国編入以前の北海道で、各警察署・分署に専任の警察官を配置するまで郡区長・戸長と署長・分署長とが兼職されたこと(1887~97年)を踏まえたものとも考えられるが、他方で台湾でも1920年まで、行政事務は警察官によって行われた。(p.228)


樺太での行政と警察の兼務ということから、北海道江差町にある旧檜山爾志郡役所の展示が直ちに想起された。いずれにせよ、警察権と行政権が同じ主体によって担われるというのは、統治機構としては、少なくとも平常のものとしては不適切ないし不健全なものである。そのようなものを設置しなければならないと考えられた土地というのがどのようなものなのかという問題には留意してよいだろう。



浅野は、この法律第25号がのちの台湾における法制上の内地延長のモデルを提供したと指摘している(316頁)。(p.245)


ここで言われている法律第25号とは、1907年の「樺太に施行すべき法令に関する法律」であり、本国法のうち、どの法令を樺太に適用するかを定めた法律であるという。確かにこの形式であれば属領に適用するには不都合なものがあればその部分だけ除外するという形で決めることができるという点で統治者側からは便利なやり方ではあったろう。

スポンサーサイト




この記事に対するコメント

この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
→http://zarathustra.blog55.fc2.com/tb.php/1319-c847d583
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)