FC2ブログ
アヴェスターにはこう書いている?
本を読んでいて気になったことなどを徒然なるままにメモしておくブログ。書評というより「読書メモ」。
プロフィール

ツァラトゥストラ

Author:ツァラトゥストラ
「ツァラトゥストラはこう言っている?」の姉妹編。日々読んでいる本から気になった箇所をピックアップして自由にコメントするブログ。

FC2ブログランキング

FC2ブログランキング

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

FC2カウンター

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

原暉之 編著 『日露戦争とサハリン島』(その1)

日本による植民地獲得のための戦争は、軍隊同士の戦いでは終わらない。土地の「無人化」をひとつの思想とする、植民地統治の安定確保実現のための「治安戦」という悪しき伝統は、このサハリン島でも展開されたのである。
 日清戦争後の台湾に始まる治安戦は、日露戦争後には朝鮮でも繰り返された。(p.55)


なるほど。台湾の場合、現地の植民地化に抵抗する人々を押さえつける戦闘が続いたことは、しばしば読んできたが、同様のことが他の植民地でも行われたという認識には私は至っていなかった。いろいろなところを比較しながら捉えていくことはやはり重要と思う。また、その比較の際に「治安戦」のような共通の概念があることは、共通性を発見するのを助けてくれる。ただし、相違を覆い隠してしまう機能もあるため留意が必要ではある。



 政治制度のうえで島はロシア帝国の完全な支配下にあった。しかし、当時の島の唯一の富、水産物についていえば、ロシア帝国の経済空間は未だサハリン島を組み込むことができていなかった。ヨーロッパ部ロシアと島のあいだの物流はあまりに貧弱だった。サハリン島は日本列島や中華世界の経済空間のなかにあった
 樺太千島交換条約から日露戦争までの約30年間はロシア人が島の海の富を名実ともに自らのものにしようと試みた時期だった。(p.67)


日露戦争前のサハリン島の水産資源は、日本、清、アメリカなどで消費されていた。



 国家の論理からすれば、島の海の富はロシア人の手にあった。しかし、この時期、島の水産物がロシア帝国内で流通することはほとんどなかった。島の海の富はもっぱら地域の論理で売られ、日本列島や中華世界で本当の富と化した。(p.90)


本書は様々な著者が様々な角度からサハリン島について論じているが、多くの個所で感じさせられるのは、いかにサハリン島を含む極東ロシアとモスクワやペテルブルクのあるヨーロッパロシアが遠いかということであった。約100年前の交通網や通信技術などの下では現在における距離感とは比べ物にならないほど「実質的に遠い」と感じられた。それは、物や情報が流通する速度といったものだけではなく、ヨーロッパ側からサハリン島の状況を想像することの難しさといったことにまで及ぶ。経済活動においても圏域が重なっていなかったことがわかる。翻って、現在はどの程度のつながりがあるのだろうか?少し気になってきた。



 当時のサハリンにおけるアイヌ語の占める位置づけは興味深い。『サハリン要覧1898年』には、ニヴフ、ウイルタなどは「先住民間、また地方行政当局や日本の漁業者との間において、ほとんど全民族の共通語としてアイヌ語を上手に使う」とある。19世紀半ばサハリンにおける日露外交交渉で使用される言語がアイヌ語だったことは、現在の我々には意外に思われるかも知れない。
 これは、アイヌの政治的支配力の強さを物語っているのではなく、サハリン先住民の多様性を表している。アイヌ語とニヴフ語はいずれも言語の系統では孤立語であり、ウイルタ語とエウェンキ語がツングース諸語、サハ語がチュルク諸語に属するというように、先住民の言語がそれぞれ異なる系統で、容易に理解し合えないという事情があった。(p.100)


日露外交交渉でアイヌ語で行われていたというのは確かに意外。



 ポーツマス条約では、日露両国間の国境線が武力によって変更されるという悪例が作られた。その後、シベリア出兵の際にサハリン北部が日本軍により再度占領され、1925年まで日本の支配下におかれ、1945年にはソ連軍が同島南部を攻撃した。このように日露国境線には不安定な状態が定期的に発生していた。(p.213)


条約の交渉に有利になると見て講和会議の直前に日本軍がサハリン島を占領し、そのことが結果的に条約で認められてしまった。第二次大戦の終結の際、ロシアが最後の数週間に侵攻してきたことでいわゆる北方領土などがロシアに支配されることになった。ある意味では、それ以前に日本側が同じような手口で領土を奪い取った歴史があったということを知っておくことには意味があるように思われる。

スポンサーサイト




この記事に対するコメント

この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
→http://zarathustra.blog55.fc2.com/tb.php/1318-c0d7ea22
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)