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アヴェスターにはこう書いている?
本を読んでいて気になったことなどを徒然なるままにメモしておくブログ。書評というより「読書メモ」。
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「ツァラトゥストラはこう言っている?」の姉妹編。日々読んでいる本から気になった箇所をピックアップして自由にコメントするブログ。

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ポール・タフ 『成功する子 失敗する子 何が「その後の人生」を決めるのか』(その3)

まず、深刻な心的外傷と慢性的なストレスから可能なかぎり子供を守ること。次に、これがさらに重要だが、少なくともひとりの親と――理想的にはふたりの親と――安定した、愛情深い関係を築くこと。これが成功の秘訣のすべてではないが、大きな、とても大きな一部である。(p.269)


このことを脳科学や様々な研究を踏まえて語っているのが本書の内容だと言っても過言ではない。



実際、多くの時間を使って、高LGの母ラットは人間でいったらどういうものだろうと考えこんだ。ヘリコプターペアレンツとはちがう。心配そうにそばをうろうろしたりはしない。絶えずなめたり毛づくろいをするわけではない。母ラットがそうするのはある特別な状況――子ラットがストレスを受けたときだ。まるで大事なスキルを教えこもうとしているかのようだった。刺激を受けたストレス対応システムをうまく管理して休止状態に戻す方法だ。人間の幼児でこのスキルにあたるのは、癇癪を起したあとやひどく怯えたあとに落ちつきを取り戻すことだとわたしは思い、それをエリントンに覚えさせようと集中した。……(中略)……。しかしもし人間で高LGに相当する行為があるとすれば、慰めたり、ハグをしたり、話しかけたりして安心させることのはずだ。……(中略)……。
 しかしエリントンが大きくなるにつれ、大多数の親たち同様わたしも気づいたのだが、愛情やハグ以上のものが必要になった。規律、規則、限度などだ。はっきりノーという人間が要る。そして何よりも必要だったのが子供に見あった大きさの逆境、転んでもひとりで――助けなしで――起きあがる機会だった。ポーラとわたしにとってはこちらのほうがむずかしかった。(p.269-270)


このあたりの考え方は、ダニエル・J・シーゲルとティナ・ペイン・ブライソンの『子どもの脳を伸ばす「しつけ」』の考え方と同じと言ってよいだろう。



 ではなぜ、貧困がかかわる学業不振の根本的な原因を探すときに、まちがった犯人に焦点を合わせ、科学が教えてくれる最大のダメージを無視してしまうのか?理由は三つあるように思われる。……(中略)……。
 第三に、新しい逆境の科学は複雑に絡みあったもので、そのなかには根深い政治信念に反する難題が――左右どちらの派閥にとっても――含まれるからだ。リベラルにとっては、保守派がある大事な一点において正しいことが科学的に示されてしまった。性格が重要である、という点だ。貧困に対抗する手段として、不利な状況にある若者にわたしたちがさしだせる最も価値あるツールは「性格の強み」をおいてほかにない。キーサ・ジョーンズやケウォーナ・ラーマがやジェームズ・ブラックが見事なほど多く持っていたもの、つまり誠実さ、やり抜く力、レジリエンス、粘り強さ、オプティミズムである。
 貧困にかんする保守派の議論が一歩及ばないのは、「性格が重要である……以上」で止まってしまうところだ。貧しい人々が成長して気質をよい方向に伸ばすために社会にできることはあまりない。彼ら自身の力でそうなってもらうしかない。いって聞かせることはできるし、罰則を設けることもできるが、我々の責任はそこまでだ、というわけである。
 しかし実際のところ、科学によって示されるのはまったく異なった現実だ。若い人々の成功にとってきわめて重要な役割を果たす性格の強みは、生まれながらのものではない。幸運や良質な遺伝子の結果として魔法のように現われるものではないのだ。また、単純な選択の結果でもない。脳内の化学反応に根差し、子供が育つ環境によってかたちづくられるため、ある程度は計測、予測が可能である。つまり、社会全体としてのわたしたちにも多大な影響力がある。……(中略)……。しかし、我々にできることは何もないとは、もういえない。(p.286-288)


本書で述べられたような処方箋は、政治的信念の左右の両派にとって都合が悪い点があるという指摘は興味深い。

確かに、多くのリベラルにとっては性格が重要だという結論は扱いにくい。ただ、この点を除けば、本書で示された考え方はリベラルの考え方の枠組みとほとんど合致するのではないか。むしろ、保守では性格が重要だという一点においては本書が示す科学的な考え方と共通するとしても、それ以外の点(特にそのような発言をする動機や目的)は相容れないため、むしろ、保守派にとっての方が受け容れにくいのではないか。(例えば、社会が何らかの方策を講じて支援をしていくべきという方向性の点でリベラルの考え方とは完全に合致するが、現代の自称「保守」派はこれに否定的であろう。また、「性格の強み」が大事だと言ったとしても、この「性格の強み」自体が社会の側からの働きかけによって形成される面があるならば、社会からの働きかけによって社会をよりよくしていくというリベラルの枠組みの範囲内で完全に処理可能であると思われる。)

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