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アヴェスターにはこう書いている?
本を読んでいて気になったことなどを徒然なるままにメモしておくブログ。書評というより「読書メモ」。
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「ツァラトゥストラはこう言っている?」の姉妹編。日々読んでいる本から気になった箇所をピックアップして自由にコメントするブログ。

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フェルナン・ブローデル 『地中海』(その3)
第Ⅱ部 集団の運命と全体の動き より

一方では人間が多すぎて、馬が十分ではないが、他方では馬が多すぎて、人間は十分にはいない!イスラム世界の寛容はおそらくこの不均衡に由来するのであろう。イスラム世界は自分の手の届くところに人間を見つけさえすれば、その人間がいかなる者であろうとも、その者を受け入れることができるのを幸せと思うのである。(p.88-89)



ブローデルの歴史叙述には幾つかの欠点がある。その一つがヨーロッパ中心主義であり、価値序列としてはヨーロッパ至上主義である。それが露骨なオリエンタリズムの叙述として表れる。この箇所はイスラーム世界に対する「偏見」の最たるものであって、到底受け入れることのできないものである。

例えば、アッバース朝治下のバグダッドやダマスカスが100万都市、50万都市であったこと、また14世紀頃に既に高層建築を建てなければならないほど人口が密集していたカイロといった都市のことをちょっとでも考えれば、イスラーム世界が「馬は多いが人はいない」などとは言うことは不可能である。

もちろん、本書は今から40年以上前に書かれたものであり、イスラーム世界についての研究が十分に進んでいなかったということはある。しかし、そうであれば、分かっていないなりの書き方をするほかないはずである。




貴金属は、いったん地中海の生活のなかに入ったら、東方に向けて流出が年中続くのである。黒海、シリア、エジプトで、地中海貿易のバランスは、ずっと前から赤字続きであった。地中海貿易が極東にまで到達しえたのは、もっぱら地中海自体の貴金属の保有をそっちのけにして金と銀を輸出したことによる。(p.189)



イタリアの経済活動は、世紀末の数年で、十分にたくましくなって、ドイツ、東ヨーロッパ、ネーデルラント、フランス、そしてスペインとの貿易において貿易収支が黒字になっている(カスティーリャの羊毛購入のためにフィレンツェにとっては赤字になっている貿易収支は考慮に入れない)。この黒字残によってイタリアはみずからのために富を蓄積することができ、レヴァントやトルコ方面の赤字を清算することができる。(p.245)



こうした貴金属の西から東への流れについてはA.G.フランクが見事に描き出すことになるのだが、その流出メカニズムの詳細についてはさらに知るべきことがあると思っている。しかし、大雑把に言えば当方の経済的優位性を示しているというフランクの考えは支持しうるものと思われる。




アメリカ大陸に始まって、地中海経由にせよ、喜望峰経由にせよ、地球を一周するこのイタリア―中国の軸は、二十世紀初めになってしか消え去ることのない世界経済の構造であり、永続であり、特徴である。反対に、ジェノヴァ―アントワープの軸は長期の変動局面の範疇にしか入らない。それはスペインがネーデルラントを握っている限り、すなわち1714年まで続き、またスペインが支配下に置いている銀のインフレが続く限り、すなわち1680年まで続く。したがって、イタリアは、十七世紀の間、以上二つの軸の交差するところにある。(p.246)



東西の軸を長期持続(構造)として捉え、南北の軸を変動局面のものとして捉えるというのは、興味深い。異なった時間軸に属する現象が同時に存在することで、ある特定の時期の状況とその前後の変化を的確に表現することができる。
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