アヴェスターにはこう書いている?
本を読んでいて気になったことなどを徒然なるままにメモしておくブログ。書評というより「読書メモ」。
プロフィール

ツァラトゥストラ

Author:ツァラトゥストラ
「ツァラトゥストラはこう言っている?」の姉妹編。日々読んでいる本から気になった箇所をピックアップして自由にコメントするブログ。

FC2ブログランキング

FC2ブログランキング

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

FC2カウンター

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

坂井豊喜 『多数決を疑う 社会的選択理論とは何か』(その1)

「民意」という言葉はよく使われるが、この反例を見るとそんなものが本当にあるのか疑わしく思えてくる。結局のところ存在するのは民意というより集約ルールが与えた結果にほかならない。選挙で勝った政治家のなかには、自分を「民意」の反映と位置付け自分の政策がすべて信任されたように振る舞う者もいる。だが選挙結果はあくまで選挙結果であり、必ずしも民意と呼ぶに相応しい何かであるというわけではない。そして選挙結果はどの集約ルールを使うかで大きく変わりうる
 言ってしまえば、私たちにできるのは民意を明らかにすることではなく、適切な集約ルールを選んで使うことだけなのだ。(p.49-50)


非常に腑に落ちた箇所。

現在の日本の選挙制度は人々の意見をまともに反映する集約ルールになっていないということは広く理解されなければならず、そのような集約ルールの下で選ばれた者が白紙委任を受けたかのような言動をすることを許してはならない。



 しばしばなされる誤解だが、一般意志を全体主義的に捉えるのは大きな誤りである。むしろそれは多様な人間が共存する基盤、自由社会の枠組みを志向するものだからだ。一般意志は差別や偏見を許容しない。社会契約はその成り立ちから、法のもとでの平等や一人一票の原則を含む、構成員間の政治的平等を重視する。これは政治的権力や政治的権威に構成員間で大きな偏りがある、全体主義的体制ではありえないことだ。(p.78)


なるほど。ルソーの一般意志についての本書の解説は非常に分かりやすく説得力を感じた。最近20-30年程度の間に展開された公共性についての議論や熟議民主主義などの議論などと共鳴し得る内容を含んでいるように思われた。ただ、一般意志の考え方には全体主義がつけ入る隙がある(そのような解釈を整合的に許してしまう側面がある)という理解は同時に重要であると思われる。その意味で、全体主義的な解釈をあまり簡単に誤解と切り捨てるべきではないのではないか。



 本来なら憲法は法律を上位から縛るものだが、公職選挙法が小選挙区制を通じて、下から第96条の実質を変えてしまっているのだ。現行の第96条が与えているハードルは実質的には三分の二ではなく過半数であり、過半数とは多数決で物事を決めるときの最低可決ラインである。64%多数決ルールの議論が与えるメッセージは、第96条における国民投票の可決ラインを、64%程度まで引き上げるべきだというものだ。
 結論をまとめよう。第96条の擁護として「人間は判断を間違いうるから現行の三分の二条件を尊重せよ」とはよく言われる。また改憲の硬性は、多数派の暴走が少数派の権利を侵害することへの歯止めだとしても重視される。
 これらの考えは確かにその通りである。しかし、そもそも多数決は、人間が判断を間違わなくとも、暴走しなくとも、サイクルという構造的難点を抱えており、その解消には三分の二に近い値の64%が必要なのだ。そしてまた小選挙区制のもとでは、半数にも満たない有権者が、衆参両院に三分の二以上の議員を送り込むことさえできる。つまり第96条は見かけより遥かに弱く、より改憲しにくくなるよう改憲すべきなのだ。具体的には、国民投票における改憲可決ラインを、現行の過半数ではなく、64%程度まで高めるのがよい。(p.134-135)


小選挙区制を通じて憲法を改正しなくても改憲のハードルが下げられてしまったというのは全くその通りであり、昨今(80年代以前と比較して)、改憲が語られることが多くなっているのもその反映であろう。

多数決にはサイクルという構造的欠陥があり、それを解消するためには64%以上の多数決による決定が必要だという指摘は極めて重要なものであり、この知識は社会全般に広く共有されるべきだ(義務教育でも、少なくともその結果だけは教えられるべきではないか)


スポンサーサイト

この記事に対するコメント

この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
→http://zarathustra.blog55.fc2.com/tb.php/1255-d14804f6
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)