アヴェスターにはこう書いている?
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井黒弥太郎 『人物叢書 黒田清隆』(その2)

 松本退去のあとは、子飼いの薩摩人あるいは宦官的帰化族によって固められた。ここには薩長もしくは薩長土肥のバランス=オブ=パワーの原則は成り立たない。中央各省も特定藩への偏向はあったが、開拓使のような独占的官庁は外にはない。このことは黒田をして安心して中央に活躍させる余裕を与えたが、反面において彼が憎まれる一因ともなった。ことに長州ゼロのうらみは、いわゆる開拓使官有物払下事件に複雑にからみつくのである。(p.115-116)


なるほど。開拓使の要職には旧薩摩藩士が多いが、長州の勢力がないということにはあまり焦点を当てて考えたことがなかった。官有物払下事件は中央政治とも関係が深いようだが、当時の政治に関わる人々の人的関係を理解することで事件の背景がよく見えるようになりそうである。



かつまた千島樺太交換条約の成立によって、対露緊張が緩和されると、国家財政ののびに比較して、開拓使への国費投入のパーセンテージは漸次低下した。(p.123)


なるほど。開拓使には当初莫大な予算が投下されたが、それが次第に民間の活力に期待する路線へと切り替わっていくのだが、その背景にはこうした国際環境の変化もあったわけだ。



 両度の航海で得たもののうち、馬車と馬橇は最も開拓に貢献した。アメリカ馬車は札幌本道の工事と共に失敗したが、ロシア式馬車・馬橇は道内の悪路・雪道にあつらえ向きであった。(p.127-128)


北海道開拓を語るとき、しばしばアメリカの影響が語られる。確かにアメリカの影響は極めて大きいので強調されるのは妥当ではある。ロシアの影響についてもそれなりにあるのだが、あまり強調されることがない。なぜだろうか。いくつか要因はありそうだが、冷戦という国際環境が開拓の物語に影響した可能性もあるのではないか。冷戦以前の時代でも、北海道(特に支配層)は常にロシアの脅威を意識してきた歴史があり、ロシアも狙っていた土地であることは確かなので、ロシアとの親近性を強調する語りは、ロシアに併合されることへの抵抗を減らす方向のものであるから、あまり好まれなかったということも考えられる。



 北海道庁は23年7月5日、首相直属から、府県なみの内相管轄に変更された。黒田時代の天皇直属からみると甚だしい格下げである。(p.254)


「格下げ」というよりは、植民地たる「外地」から「内地に近い土地」になっていったことの反映と見るべきと思われる。



 山県のあと松方内閣のとき、内相は長州人品川弥二郎で、彼は残存する北海道の薩摩閥を根絶しようと、自分が就任して二週間目に、黒田の盟友永山長官をくびきり、渡辺千秋に旨を含めて北海道庁長官として乗り込ませた。
 渡辺は赴任そうそう大量の官吏を免職し、東京から引具してきた部下を要職につけ、官吏の利権に関与することを厳に禁じた。(p.254)


北海道における薩摩閥が根絶された後は、藩閥政治は下火になっていった印象を持っているが、具体的にはどうなのだろうか?



 折しも24年末、第二国会において、田中正造が早くも北炭の横暴を攻撃しはじめるなどで神経を尖らしている折柄、夕張線の工事にあたって、無許可で一部の路線を変更していることがわかった。北炭は利子補給を受ける道庁の保護会社であり、その監督権限は北海道庁長官にあった。その変更は北海道庁技師の選定によるものであるとの弁解もあらばこそ、25年2月、渡辺は職権を以てただちに堀を罷免してしまった。……(中略)……。堀の連類の同郷人も続いて引払い、ここに道内の薩摩閥といわれるものは全く姿をけした。(p.256-257)


薩摩閥が北海道において勢力を失った後、彼らはどうなったのだろうか、というのも気になる問題である。

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