アヴェスターにはこう書いている?
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井黒弥太郎 『人物叢書 黒田清隆』(その1)

 これまでの明治史は、いわゆる薩長史観とされるが、実はその薩と長の間にも激しい抗争があった。明治前半は薩が優勢であったが、後半になると長の伊藤の独走体制になってしまった。黒田清隆の名だけはよく知られているけれども、その生涯特に後半生は、伊藤主流に覆いかくされて殆ど分からない。ここでは黒田は幕臣榎本らよりもいっそう敗者として埋没している。(p.1)


明治維新は江戸の幕府に対して薩長を中心とする勢力によるクーデタという側面を持つが、その勢力争いに関して短い叙述で概要を把握できるように記されているのがよい。



 長州の実力者は木戸孝允である。東北諸藩主の処分のときから、……(中略)……強硬ぶりであった。これは独り木戸ばかりではなく長州人一般の傾向である。これに対して薩摩人はすでに西郷・黒田にみたように、もっぱら寛典を主張したのである。(p.40)


興味深い対比。いわゆる「民族性」論のような書きぶりにはなっているが、性格というより当時の政治における対応方針の違いと理解すべきだろう。



 明治3年5月9日、黒田を樺太専任の開拓次官に発令した。……(中略)……。
 一時は兵部省の輝ける星であった黒田は、その好みの武官から文官へ、四等官から二等官へ進んだとはいうものの、官吏100人そこそこの辺境へ流竄されたも同然である。そしてそれは結局軍人西郷から文官大久保路線への転換でもあった。生涯の決定的な曲り角である。(p.49)


樺太開拓次官になったことが黒田にとって転機だった。



アメリカの大陸横断鉄道に乗ってみて、たちまち鉄道費削減の愚を悟った。(p.52)


興味深いエピソード。



 ケプロン批判もないわけではないが、アメリカとしては著しく向英的な日本を向米に切り換えるために、第二のペリーとして彼を送ったのである。(p.52)


興味深い見方。(事実かどうかは保留。)



 明治6年11月、内務省が設置され、大久保が内務卿となる。その殖産興業政策は、むろん開拓使がその眼目であったが、それはいわゆる官業政策であって、外資を仰がず自己資本によって産業革命を達成しようとするものであった。従ってケプロンの外資依存の構想は抑圧されざるを得ない。黒田も時にはケプロンの意に添わんとして、開拓使の例外的ケースをのぞんだこともあったが、結局、5年度から規模を縮小し、官業政策に合せざるを得なかった。そこにケプロンの財政介入拒否の理由があった。もしそのことにも容喙させることになれば、結局開拓使の主導権はあげてアメリカ人に委し、黒田不在の開拓使におちたかもしれない。黒田はこの一線をまもり、ケプロンの反感をなだめつつ、しかも顧問団の効果的運用を期するのは苦心のいるところであった。(p.57)


明治政府・開拓使はできるだけ外国の資本に頼らずに自国の資本と産業を育成しようとしたのに対し、ケプロンらはむしろアメリカ製品の市場として日本・北海道を見ていた。実際には北海道の開拓に当たってはアメリカからそれなりの物資を輸入したことは間違いないが、自国の産業を育成しようという方向性自体は守られたように思われる。



 東京官園は広さ68ヘクタール、そこで輸入作物・苗木・家畜・農具などを試験した。その指導にはアメリカ人のエドウィン=ダンがあたった。彼としては東京でやるよりも、直接北海道でやる方が能率的であると指摘したのに対してケプロンは、それには別の意味があるのだと答えたと。たぶん彼は官園を東京に置いて、開拓使とアメリカの勢威とを誇示することが、政治的に意味があるとしたのであろう。(p.59)


なるほど。開拓使の官園が東京に置かれたことにはこうした隠された意図があったのか。興味深い。


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