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アヴェスターにはこう書いている?
本を読んでいて気になったことなどを徒然なるままにメモしておくブログ。書評というより「読書メモ」。
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「ツァラトゥストラはこう言っている?」の姉妹編。日々読んでいる本から気になった箇所をピックアップして自由にコメントするブログ。

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三浦展 『下流社会 新たな階層集団の出現』
本書の概要などはウェブサイトのほうに載せたので、こちらのブログには比較的細かいことについて、思ったことなどを書いておく。

 つまり、若いうちは親元にいて、その後、結婚して夫婦だけで暮らし、子供ができたらできれば親元かに住むのが最も「下」になりにくい生き方だということである。あま打ち消し文りにも保守的だが、実態はやはりそれが幸せのパターンのようである。
 そう考えると、1980年代以降、家族の形は急速に多様化したが、形の多様性ほどに意識や価値観はそれほど多様化していないと言えるのではないだろうか。逆に言えば、幸せパターン通りに生きられる人が減ったのである。(p.134)


「下流」の階層意識が広まる土壌は、「幸せパターン」が客観的にはありながら、それができなくなってきたことに求められるのではないか?

本書によれば「下流」は「自分らしさ」を求めながらも「だらだら」生きていることになるが、幸せを感じられないところに追い込まれているからこそ、その状況下で「どうして自分は幸福感が感じられないのだろう」という疑問が生じ、自分を「幸せパターン」から追い出している社会的圧力に拘束されている感じに気づく。それは社会に拘束されているので「自分らしく」生きることができていないことだと解釈される。

そして、生活実感として幸福感や満足度が高いのでエネルギーが出てこない。だから、明るい未来に対する展望を持つことができず、現在志向的になる。ビジョンのない現在志向では何かに努力することもできず、結果として「だらだら」する。そして、そのサイクルが再生産していくのではないか。

この推論において「下流」の階層意識を持つ人は幾つかの判断の誤りを犯しているが、致命的なのは「自分らしく」生きるというもっともらしいことが現在の自分を正当化する方向で使われていることであろう。本書の警告もそうした点に向けられているように思われる。

「自分らしく」生きている時の「自分」というのはいわば「未来の自分」であって「現在の自分」ではないのではないか?つまり、自分であることは自分になることである

自分らしさを志向すること自体はよいのだが、自分らしさを求めるあまり、階層意識と生活満足度の両方を低下させているのである。(p.168)


本書でもこのように述べられているが、これでは物事の半分しか捉えていないのではないかというのが私見である。

つまり、まず、下層に押し込められており上昇可能性が見込めない、見えてこないという状況(階層の固定化)があり、その中で何とか幸福感を求めようという「無意識的な努力」が広く行われた結果、「自分らしさ志向」という形での自己正当化の論理が広まった。つまり、階層の固定化がこの(「自分らしさ」という)自己正当化の意識を支えているというのがまずある。

その上で、階層の固定化という状況が変らない限り、自分らしさ志向という自己正当化のイデオロギーは下層を再生産することに寄与してしまう(これだけが原因ではないが)ということではないだろうか。

このような点で、本書の階層意識に対する認識やデータの解釈にはやや違和感を感じることがある。意識が階層を再生産する方向に対する危惧ばかりが強調されており、精神論的であり、部分的には道徳的説教のようなものさえ感じる箇所がある。

本書の元になっている調査は、サンプル数の少なさや首都圏への偏りなど客観的分析のための条件が不十分なのに、こうした解釈が多いという点で階層論の著書として見た場合、本書の質はやや低いといわざるを得ない。そして、ある意味では、質が低いからこそ幅広い人々に支持されたのだろう
(もちろん、「質が低い」と必ず売れるわけではない。本書の場合は、感覚的にわかりやすいために一般受けはしたが、論拠は不足していることを言ったまでである。)

その意味で、佐藤俊樹の『不平等社会日本』や橘木俊詔『日本の経済格差』などの方が、そこそこわかりやすい上に認識も妥当なものが多く、有益な本だと思う。もちろん、本書も、日本における階層固定化や階層意識のあり方を考えていく上では有益な本であるが。
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テーマ:読書メモ - ジャンル:本・雑誌

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