アヴェスターにはこう書いている?
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ジェームズ・J・ヘックマン 『幼児教育の経済学』

子供の不利益を決定する主要な要因は、たんなる経済状況や両親の有無よりも成育環境の質であることを示す証拠はたくさんある。たとえば、ベティ・ハートとトッド・リスレーは1995年に42の家族を対象にした研究で、専門職の家庭で育つ子供は平均して一時間に2153語の言葉を耳にするが、労働者の家庭では1251語、生活保護受給世帯では616語だとした。これに対応して、三歳児の語彙は専門職の家庭では1100語、労働者の家庭では750語、生活保護受給世帯では500語だった。(p.27-28)


耳にする言葉の数と語彙の数は確かに因果関係がありそうである。さらには「耳にする言葉の質」(コミュニケーションの質)も子どもの知的および情緒的な成長とって重要だろうと思われる。



幼少期に認知力や社会性や情動の各方面の能力を幅広く身につけることは、その後の学習をより効率的にし、それによって学習することがより簡単になり、継続しやすくなる。(p.34)


本書におけるヘックマンが幼少期の教育が重要だと主張する際のポイントの一つが、このような累積的な効果にある。



チャールズ・マレー 「幼少期の教育的介入に否定的な報告もある」より

やる気に満ちた人々による、小規模の実験的努力は成果を示す。だが、それを綿密な設計によって大規模に再現しようとすると、有望に思えた効果が弱くなり、そのうちにすっかり消滅してしまうことが多い。(p.62)


ヘックマンの採用している証拠が少ないサンプルによるものであるが、大規模なプロジェクトでの効果はそれほどではない。小規模な集団で行った手法も、全国的な教育行政などの施策として実施される場合には変質しうる。



以下、大竹文雄による解説より

逆に言えば、非認知能力が大きく発達する就学前の時期に、その発達を促す教育をすることが重要で、その発達がその後の教育の効率性を高め、社会的な成功につながるのである。(p.119)


p.34からの引用文等でのヘックマンの主張に対応する解説。ここでは、教育は通常、「社会的な成功」とは何かという、その社会が価値あると認めるものへと方向づけようとして行われるものである、という点は押さえておきたい。



現実には自治体によっては、高齢化が進行する中で、教育予算を削減して福祉関連に割り当てるところも出てきている。実際、Ohtake and Sano(2010)によれば、地方分権と税源移譲の進んだ1990年代後半以降、自治体の高齢化率と教育予算の減少が連動するようになってきた。(p.122-123)


日本は教育関連予算が少なすぎることが大きな問題である。このため家計からの教育支出が多額に必要となってしまい、貧困家庭とそれ以外の家庭で教育機会の格差が拡がり、それが社会的な格差を再生産する方向に働いている。いわゆる新自由主義的な政策が進められることで削られた予算の一つが、もともと少ない教育予算であったことは銘記すべきだろう。

とは言え、安倍政権のような復古主義的反動主義に発する国粋主義的な方向で教育を進めようとすることは社会全体にとって正常な判断が出来なくなる傾向を助長するという政治的にはより恐ろしい帰結をもたらしうるものであり、本書で述べられているのとは別次元の危険な方向に向かっていることも大きな問題である。

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