アヴェスターにはこう書いている?
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飯田洋介 『ビスマルク ドイツ帝国を築いた政治外交術』

 1880年代前半は、ドイツ国内において自由主義左派勢力が活気づいた時期でもあった。その背景には、1880年に83歳を迎えた皇帝ヴィルヘルム一世がいつ亡くなってもおかしくない状況があった。皇太子フリードリヒ・ヴィルヘルムはこのとき49歳、普墺戦争や独仏戦争では一軍を率いて勝利に貢献しており、後継者としては何の問題もなかった。ただ、ビスマルクにとって不都合なことには、彼がイギリスのヴィクトリア女王の長女ヴィクトリアを妃に迎え、かねてから自由主義に好意的な存在として周囲の目に映っており、また彼自身そのように振舞うこともしばしばあった。進歩党や国民自由党離脱組の自由主義左派勢力は、このような状況を前に大同団結して「ドイツ自由思想家党」を1884年に結成していたのである。フリードリヒ・ヴィルヘルムが即位すればこの政党が大きく躍進し、宰相の地位を追われるかもしれない。危機感を抱いたビスマルクは、同党に代表される親英的な自由主義左派を「帝国の敵」と位置づけて攻撃したのである。
 この時期に「帝国の敵」というレッテルを貼られたもののなかには、ポーランド人勢力もあった。「文化闘争」の折にもカトリック抑圧策を通じてプロイセン東部地域におけるポーランド人勢力を抑え込もうとしたビスマルクは、1880年代半ばになるとドイツ語教育の推進やドイツ人農民の入植といったゲルマン化政策をさらに推し進めるとともに、ドイツ国籍を持たないポーランド人農業労働者を国外に追放したのである。(p.174-175)


マックス・ウェーバーに関心を持ってきた者としては、ウェーバーが1890年に行なった東エルベの農業労働者に関する調査を行ない、ポーランド人に対して敵対的な主張がなされたことが想起される。ウェーバーの父が国民自由党の代議士であり、父と親交を持つ政治家たちとの議論などを聞きながら育ったという彼の生育環境なども伝記的なところではよく指摘されるが、こうした環境がどのようなものだったのかということを知る意味でも、ウェーバーに焦点を当てていない同時代の出来事や動きを知ることは参考になる。



 かくして、ビスマルクは政界を離れ、そしてこの世を離れたときにはじめて崇拝の対象となり、カリスマ的な存在となってその後のドイツに君臨し続けていったのである。H・U・ヴェーラーはビスマルクの統治スタイルを、マックス・ヴェーバーによる支配の三類型の一つ「カリスマ的支配」として位置づけた。確かにビスマルクは「カリスマ的」な存在としてよいであろう。だが、近年の研究が明らかにするように、彼がカリスマとして崇め奉られたのは、彼が政界を離れた1890年以降のことであり、しかも彼の実像とは大きくかけ離れたものであった。ここに見られるカリスマとしての「ビスマルク」は、常に軍服を着て、「鉄血宰相」を彷彿とさせる武断的で強力なリーダーシップを持ち、ドイツ・ナショナリズムを体現する天才的な政治能力を持った人物であった。それは20世紀ドイツの辿った激動の歴史が、まさにそうさせてしまったのであろう。(p.234-235)


確かにビスマルクというと、「鉄血宰相」として武断的なイメージがある。本書ではそうしたイメージとは異なる姿が描かれており、大変参考になったのだが、武断的なイメージはその後のドイツ・ナショナリズムの高揚の中で一種の「国父」のようなものとしてビスマルクが祀り上げられたことにより作りだされたもののようである。

ウェーバーはビスマルクが政界を引退した後の1890年代頃から1910年代に政治的な発言をしていくが、これに関連して、ビスマルクなきあとのドイツの政治を誰が担うべきかという課題を彼は持っていたことがよく指摘される。ウェーバーのこうした問題設定自体もビスマルク神話の形成と同時進行していったものであることが見えてくるように思われる。

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