アヴェスターにはこう書いている?
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「ツァラトゥストラはこう言っている?」の姉妹編。日々読んでいる本から気になった箇所をピックアップして自由にコメントするブログ。

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中室牧子 『「学力」の経済学』

 次いで、2002年に「教育科学改革法(Education Science Reform Act)」が制定されたことによって、自治体や教育委員会が国の予算をつけてもらうためには、自分たちの行っている教育政策にどれくらいの効果があるのかという科学的根拠を示さなければならなくなりました。このため米国では、自治体や教育委員会が、自ら積極的に教育政策の効果を科学的に検証し、そこから得られた知見が、自治体や国など全体の政策に反映されるようになっています。これを「科学的根拠に基づく教育政策」または「エビデンスベーストポリシー」といいます。(p.18-19)


実証主義及び功利主義の方向に傾くことになり、検証しやすく数値化しやすいことだけを助長するという偏りを持ったやり方ではあるが、現在までの日本の教育のようにほとんど何の根拠もないまま政策を決めているような現状と比較すると遥かに優れたやり方であり、見習うべきところであろう。



 「テストでよい点を取ればご褒美をあげます」
 「本を1冊読んだらご褒美をあげます」

 右のうち、子どもの学力を上げる効果を持つのはどちらでしょうか。
 ……(中略)……。学力テストの結果がよくなったのは、インプットにご褒美を与えられた子どもたちだったのです。

 とくに、数あるインプットの中でも、本を読むことにご褒美を与えられた子どもたちの学力の上昇は顕著でした。一方で、アウトプットにご褒美を与えられた子どもたちの学力は、意外にも、まったく改善しませんでした。……(中略)……。

 「インプット」にご褒美が与えられた場合、子どもにとって、何をすべきかは明確です。本を読み、宿題を終えればよいわけです。一方、「アウトプット」にご褒美が与えられた場合、何をすべきか、具体的な方法は示されていません。
 ご褒美は欲しいし、やる気もある。しかし、どうすれば学力を上げられるのかが、彼ら自身にわからないのです。
 ここから得られる極めて重要な教訓は、ご褒美は、「テストの点数」などのアウトプットではなく、「本を読む」「宿題をする」などのインプットに対して与えるべきということです。(p.32-36)


私自身の見解としては、勉強をさせるための手段として、あまり「ご褒美」に頼るべきではないと考えているが、この引用文で述べられている内容は、ご褒美を与える場合にはどのように与えるべきかということについて非常に重要な示唆を与えてくれる内容である。



 子どもをほめるときには、「あなたはやればできるのよ」ではなく、「今日は1時間も勉強できたんだね」「今月は遅刻や欠席が一度もなかったね」と具体的に子どもが達成した内容を挙げることが重要です。(p.51)


能力を褒めるとやる気を蝕むという。具体的に達成した事柄やそのための具体的な努力の内容を褒めることで取り組みの動機を強められる。これは子どもに限らず、仕事で同僚や部下を褒める場合にも同様のことが言えそうである。

ここで書かれていることを含め、本書の具体的な指南の大部分は、私としては当たり前のことであると思われる内容が多かったが、それらがデータによって支持されているため、元々の見解をより確信を強めてくれるという点で有益だった。



 「勉強するように言う」のは親としても簡単なのですが、この声かけの効果は低く、ときには逆効果になります。エネルギーの無駄遣いなので、やめたほうがよいでしょう。
 逆に、「勉強を見ている」または「勉強する時間を決めて守らせている」という、親が自分の時間を何らかの形で犠牲にせざるを得ないような手間暇のかかるかかわりというのは、かなり効果が高いことも明らかになりました。

② 男の子なら父親が、女の子なら母親がかかわるとよい

 家庭での学習へのかかわり方は母親に比べて低い父親ですが、世の中のお父さんたちは決して自分の役割を侮ってはいけません。なぜなら、子どもと同性の親のかかわりの効果は高く、とくに男の子にとって父親が果たす役割は重要だからです。
 最近の研究でも、とくに苦手教科の克服には、同性同士の教師と生徒の組み合せのほうが有効であるなど、類似の知見が得られているものがあります。

 ……(中略)……。実は、私たちの研究では、祖父母や兄姉、あるいは親戚などの「その他の同居者」が、子どもの横について勉強を見たり、勉強する時間を決めて守らせていても、親とあまり変わらない効果が見込めることがわかっているのです。(p.60-61)


本書の指南内容には当たり前の知見が多いと述べたが、子どもの勉強時間を増やすために「勉強するように言う」のが殆ど効果がなく逆効果の場合があるというのも、それにあたる。勉強するのと見ていたり、時間を決めたりするのが効果的だというのも、予想通りといったところだが、同性の親(保護者等)がする方が効果が高いというのは意外性があり興味深かった。



日本政策金融公庫の調査では、子どもがいる家庭は、なんと年収の約40%をも教育費に使っているそうです。(p.73)


子どもが大学に通学している間はこのくらいの割合になってもおかしくないが、それ以外の時期にここまでの割合になるのだろうか?(年収600万円の家庭だとすると240万円、月平均20万円の教育費を使っているか?また、年収300万円の家庭で月10万円も教育費をかけているだろうか?無理ではないか?)にわかに信じがたい。



学力など、「アウトプットを生み出すために必要とされるインプット」はすべて「資源」と呼ばれます(33ページの教育生産関数を参照)。具体的には、親の収入が少なかったり、仕事が忙しくてあまり子どもにかまってやれないやれないというようなことも「家庭の資源」の不足とみなします。

 そうした貧困家庭の資源の不足を補うために、ペリー幼稚園プログラムでは、週に1度1.5時間ほどの家庭訪問を行い、先生たちが普段どのように子どもと遊び、話しかけるかを実際にやってみせるなど、親に学びの機会を提供したのです。(p.79)


これは見るからに効果がありそうなやり方だが、本書によるとデータでも持続的に効果が認められているという。



 就学前教育への支出は、雇用や、生活保護の受給、逮捕率などにも影響を及ぼすことから、単に教育を受けた本人のみならず、社会全体にとってもよい影響をもたらすのです。
 ……(中略)……。

 社会収益率が7~10%にも上るということは、4歳の時に投資した100円が、65歳の時に6000円から3万円ほどになって社会に還元されているということです。(p.82)


データで見ても就学前教育は社会全体にとっても良い影響があるということは、今まであまり考えたことがなかったが、指摘されてみるとその通りと思える。



 また、心理学の分野でも、「細かく計画を立て、記録し、達成度を自分で管理する」ことが自制心を鍛えるのに有効であると多数の研究で報告されています。(p.93)


計画やその実行状況を記録することで、目的や目標が明確化され、自覚しやすくなること、さらに、目的と現状とのギャップ(差)がどの程度なのか、何をすべきなのかということが明確になる。このような「明確さ」は「自制心」を支持する重要な要素なのではなかろうか。



私が行動遺伝学の専門家である九州大学の山形准教授らとともに行った研究では、中学3年生時点の子どもの学力の35%は遺伝によって説明できることが、明らかになっています(図29)。

 これ以外にも、生まれ月、生まれ順、生まれたときの体重など、どう考えても子ども自身にはどうしようもないようなことが、子どもの学力や最終学歴に因果効果を持っていることを示すエビデンスもあります。(p.118-119)


学力と遺伝の関係は思っていた以上に深いようである。また、生まれ月や生まれ順は同じ学年でも小さい頃の1年近い違いは発達の状況の違いなどを通して成績や学歴に影響しているのだろうが、このあたりの研究についても読んでみたいものだ。



家庭の資源に格差がある中で、すべての子どもに同じ教育を行えば格差が拡大していくだけですが、その矛盾は見過ごされがちです。
 ……(中略)……。

 どうして、ゆとり教育が実施された時期に子供の学力格差が拡大したのでしょうか。きっかけは、週休2日制でした。
 一橋大学の川口教授の研究によれば、ゆとり教育の一環として学校週休2日制が導入された2002年の前後で比べると、子どもたちの学習時間に顕著な格差が生じていたのです。
 学歴の高い親に育てられた子どもは、土曜日の学習時間の減少を平日の学習時間の増加で埋め合わせたのですが、学歴の低い親はそのような行動を取らず、結果として土曜日が休みになったことで、学習時間の格差が生じた形となりました。
 九州大学の武内准教授らの研究でも、学校週休2日制が始まった後に、とくに高所得者層が子どもの学習費(とりわけ塾などへの支出)を増加させたことが明らかになっています。このように、ある世代の子ども全員を対象にして「平等」に行われた政策は、親の学歴や所得による教育格差を拡大させてしまうことがあるのです。(p.127-129)


学歴の高い親のどのような行動(ないし価値観)がどのような形を通して子どもの学習時間の変化に繋がったのか?このあたりのメカニズムはいつも気になるところである。

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