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アヴェスターにはこう書いている?
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J.S.ミル 『自由論』

仮に一人を除く全人類が同一の意見をもち、唯一人が反対の意見を抱いていると仮定しても、人類がその一人を沈黙させることの不当であろうことは、仮にその一人が全人類を沈黙させうる権力をもっていて、それをあえてすることが不当であるのと異ならない。(p.36)



現代の日本のように言論が次第に窮屈になってきている状況では、こうしたリベラリズムの思想は重要な意味をもつ。150年前の言説とは思えないほどに今でも色褪せていない。思想としては厳密にはいろいろと問題はあるとしても、現代の一般人の常識としてはミルの『自由論』は色褪せていない。

もちろん、この言葉だけを取り出して原理として用いるのはミルの思想とは相容れない。ミルも(著書や箇所により微妙にニュアンスを変えながらも)留保は付している。




しかしながら、意見の発表を沈黙させることに特有の害悪は、それが人類の利益を奪い取るということなのである。すなわち、それは、現代の人々の利益を奪うと共に、後代の人々の利益をも奪うものであり、また、その意見を抱懐している人々の利益を奪うことはもとより、その意見に反対の人々をさらに一層多く奪うものである、ということである。(p.36-37)



一つ上の引用文もそうだが、ミルの議論にはリベラリズムに特有の形式主義がある。(利益という言葉の意味内容などが不問に付されているため、形式は整っているが、内容はやや曖昧さが残ることなど。)しかし、ミルが言うような可能性はないわけではなく、その意味で、こうした考え方は貴重なものではある。

政治家がNHKの放送内容に圧力をかけるような世の中にあっては、こうした類の考え方はさらに強力なものへと練り上げていく必要があろう。




すべて議論を抑圧することは、自己の無謬性を仮定することである。(p.39)



なかなかの名言である。ただ、次のように言う方が正しい。「すべて議論を抑圧することは、自己の無謬性を仮定しようとすることである」と。そして、実際問題としては、自己の無謬性を仮定したいにもかかわらず、それだけの自信がないという心理の表れであることが多い。




一般に、広く認容されている意見に反対な意見は、つとめてその用語を穏健にし、また極めて慎重に不必要な攻撃を慎むことによってのみ、耳を貸してもらえるのであって、いささかなりともこの用心を踏みはずすならば、ほとんど常にその地歩を失わざるをえないのである。しかるに、勢力ある意見の側は、法外の罵言を逞しくしても、人々は実際に、反対の意見を告白することをも、反対の意見を告白する論者に耳をかすことをも、差し控えてしまうのである。それ故、真理と正義とのためには、勢力ある意見の側での罵言の濫用を抑制することの方が、反対意見の側の罵言を抑制することよりもはるかに重要なのである。(p.110-111)



現在の日本において、最も「勢力ある意見」は、ネオリベラリズムを肯定・容認してしまう意見であると私は考える。ネオコン言説には多少の抵抗感がまだ残っている。安倍内閣が参院選が終わるまで過激な言動を差し控えているのはそのためであろう。その意味からも、反ネオリベの言説を紡ぎ出す際には、太字の部分の教訓は生かしていった方がよいかもしれない。




あとがきより

1938年といえば、中日戦争勃発の翌年にあたり、戦争が日ごとに拡大してゆく最中であった。軍国主義はすでに政治的指導権を握り、学問・思想・芸術をもその統制下におこうとして、弾圧は一段と激しくなって来ていた。そして、この年の十月、自由主義の代表的思想家と目されていた先生(この訳書を最初に依頼されていた河合栄次郎氏のこと――引用者)――したがって当時の左翼からはしばしば保守反動として攻撃されていた先生――までが、右翼の告発によって、その自由主義の故に著書四点を発売禁止にされ、さらに、東大の教職をも去るように圧迫されることになった。(p.284)



これが70年ほど前の日本の状況であることを忘れてはなるまい。
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