アヴェスターにはこう書いている?
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大阪社会保障推進協議会 『住民運動のための国保ハンドブック2012』(その1)

 簡単に言えば、大企業は「人間の使い捨て」をやり、その後始末を国保に求めています。……(中略)……。
 健康な人を採用し、不健康になればリストラするのですから、会社の健康保険組合は大変に黒字を出し、ホテル顔負けの保養所やボーリング場、ゴルフ場をつくったりしました。その後、健保間の不公平是正のための「老人保健拠出金」の賦課などで財政的に窮屈になりましたが、大企業健保組合の管理者は企業幹部と役人の天下り先であり、企業負担の軽減しか考えていないようです。
 例えば、大手ゼネコン各社は現業労働者の多くを経営者負担のない「建設国保」に加入させています。企業の健保組合に加入させれば、すくなくとも健康保険料の半額は経営者が負担しなければならないからです。(p.12)


大企業の「人間の使い捨て」は、健康保険の分野で語るよりより直接的に雇用の分野で語る方が自然であり、より説得力が出ると思われる。健保組合ではなく建設国保に加入させているというのもそういった事例も多いのだろうが、健康保険ベースで考えたというよりは雇用形態をより流動的なものにしておくことで人件費を節減しようという企業側の意図があり、その中の一環として建設国保加入となっている、と言うことのように思われる。このため、この箇所のように健康保険ばかりに焦点を当てながら語るやり方は、まったく的を外しているわけではないにせよ、事実の論理的な結びつきを十分な説得力を持たせることができていないように思われ残念である。指摘していることは基本的に間違っていないだけにもう少し説得力があるやり方で語って欲しい。



まず「戦前・戦中の日本に国立病院はありましたか?」という設問です。「あった」「なかった」で答えるのはちょっと難しいのですが、戦前・戦中に存在した国立の医療機関は国立大学付属病院とハンセン病療養所ぐらいでした。戦後生まれの国立病院・療養所のほとんどは元陸軍病院、元海軍病院、元日本医療団結核療養所、元傷痍軍人療養所など、戦争目的に集積された医療機関が、戦後改革のなかで、国民のための国立病院に生まれ変わりつつあったものです。
 しかし、1980年代に中曽根内閣の「戦後政治の総決算」路線のなかでつぶされつつあります。(p.15)


国立病院のほとんどが、もともとは戦争目的の医療機関であったというのは意外だったが、言われてみればなるほどと思わされる。国民全体の健康や衛生の向上よりも軍事に関する対応の方が戦前にあっては優先順位が高かったとしても不思議はないからである。戦後はより公共的な機関になろうとしていたのに、中曽根内閣以後の新自由主義的な改革によって公共性よりも私的な利益を追求せざるを得ない状況へと追い込まれているというところか。



 1983年に「老人医療費無料制度」にかわって「老人保健制度」が、1984年には「退職者医療制度」「高額療養費制度」が始まり、国庫支出金の負担が「給付費×50%」となりました。
 実は、これらの新しい制度は「国庫支出金」を減らし、医療保険同士、また国保同士の助け合いの財政運営に変えるという目的があったのです。(p.24)


なるほど。いろいろと名目は違うように見えても、本音では中央政府の財政責任を回避するという共通目的があったということか。

2008年に創設された後期高齢者医療制度や2018年から始まる国保の都道府県単位化などもこれと共通の目的をもつ動きの一環であると押さえておくことは重要である。



 高額療養費とは、病院などの窓口で支払う医療費を一定額以下にとどめる目的で支給する制度ですが、実は国保同士の助け合いの制度です。
 高額療養費には「高額医療費共同事業」と「保険財政共同安定化事業」があります。
 「高額医療費共同事業」は1件あたり80万円を超える保険給付費を国保50%、国庫負担25%、都道府県負担25%で拠出し、都道府県国保連合会にプールし給付します。
 「保険財政共同安定化事業」は1件あたり30万円以上80万円未満の保険給付費を都道府県ごとの国保から国保連合会に拠出させ給付する、いわば、国保同士で助け合う制度です。なお、2011年度の国保法改正で2012年度からは1円以上からとなりました。(p.25)


なるほど。言われてはじめて気づいた。高額療養費は確かに被保険者個人の立場から見れば、負担額を一定額以下にとどめる制度だが、そのための財政の仕組みに目を向けると「国保同士の助け合いの制度」という別の側面があることが分かるわけだ。



 「老人保健制度」が、75歳以上の高齢者と65~74歳の障害者を国保や健保に加入させたまま医療を保障するのに対し、「後期高齢者医療制度」は、高齢者を他の医療保険から完全に切り離します。これにより、「後期高齢者」の給付費増や人口増がそのまま高齢者の保険料にはね返るようになりました。この仕組みは介護保険の財政設計と同じで、「保険料か給付か」という選択が、高齢者にせまられることになりました。(p.25)


なるほど。確かに介護保険とほぼ同じような設計であり、今度は「高齢者同士の助け合いの制度」にしようという隠された(?)目的があることが指摘できるわけだ。ただ、高齢者を他の医療保険から完全に切り離すという表現は正確ではなく、行き過ぎていると思われる。というのは、他の医療保険は拠出金によって「後期高齢者」の医療費の一部を賄っているため、この割合を変化させることができれば、必ずしも後期高齢者自身に「保険料か給付か」という選択を突きつけるものになるとは限らないからである。

本書の指摘は、制度について政府が語らない隠された目的があることを見えるように指摘してくれている点で有益だが、論証の仕方には粗雑なところがあるのが残念でありまたもったいないと思う。

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