アヴェスターにはこう書いている?
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松尾匡 『この経済政策が民主主義を救う 安倍政権に勝てる対案』

 そしてこの本では、「アベノミクス」と銘打って遂行されている経済政策もまた、安倍さんの野望実現のための手段だと見ています。もしそうならば、「アベノミクスはお金持ちや財界や金融資本のためにやっていることで、すぐに破綻する」というような見方をしていたら、足をすくわれることになります。選挙のときに最も効果的に好景気になるように、政策のタイミングを計っているとしたらどうでしょうか。(p.6)


同意見であるが、テレビや新聞などではこうした角度からの分析などが非常に少ないように思われ、あまり政治に関心や知識が深くない人にとってはこのことはまだ十分認識されていないように思う。政権の意図を推定することになるためやりにくいという面があるのだろうが、時系列的に政策と経済情勢の変動を追えば(本書が示した通り)そろそろ示すことができる時期になっているはずである。



「左翼」というものは、搾取され虐げられた民衆のためにある勢力だということを忘れてはいけません。新自由主義の緊縮政策に苦しめられてきた民衆が望んでいるのは、政府が民衆のためにおカネを使い、まっとうな雇用をつくりだすことです。その資金は、おカネのあるところから取ればいいし、それでも足りなければ無からつくればいい!それが今、左翼の世界標準として熱狂的に支持されている政策なのです。(p.10)


左派・左翼が誰の利益を擁護する勢力かという点を正しく指摘している。本人が「虐げられている」と思っていなくても、「より権力(政治的権力だけでなく経済的な権力や社会的な権力を含む広義の権力)が小さい側の人々の権利や利益を守るべきだ」というのが左派の基本的な立場だと私も思っている。(もちろん、これとは逆に、「より権力が強い者の利益を守り、強めよう」というのが右翼や保守の立場である。)

私にとって本書の提示する議論が新しかったのは、おカネを無からつくり出す政策を採っても、現在の経済情勢の下では副作用が生じるリスクが低いため望ましいということがはっきりしてきたことであり、欧米の左派的経済政策と日本における経済政策とのズレやねじれがあるという認識である。



 でも、そういえば、世界の名うての大物左派・リベラル派論客が、「アベノミクス」を高く評価するような発言をしていました。アメリカのリベラル派ノーベル賞経済学者のポール・クルーグマンさんやジョセフ・スティグリッツさん、インド出身のノーベル賞経済学者アマルティア・センさん、フランスの人口学者エマニュエル・トッドさん。『21世紀の資本』(みすず書房、2014年)がベストセラーになったトマ・ピケティさんも、「安倍政権と日銀が物価上昇を起こそうという姿勢は正しい」と言っています。
 しかし、この本でくわしく見ますが、これらの論客の誰も、「第三の矢」の規制緩和路線や、消費税増税や、「第二の矢」のこれまでのおカネの使い道をほめているわけではないのです。これらの論客が支持しているのは、金融緩和と政府支出の組み合わせという枠組みだけです。(p.10-11)


この枠組みこそ欧米の左派の経済政策の枠組みであり、日本の左派はこの枠組みをさらに推進するよう圧力をかけるとともに、規制緩和路線や消費税増税に反対し、政府支出の使い道を福祉や医療、子育てなどの分野に振り分けるべきだとする。

論理的には非常に説得力があると思うが、正直に言って経済政策についてまともな知識を持たないほとんどの有権者にとってどこまで届くか、ということには不安がある。問題はどのように伝えていくかという所にあるように思われる。



円安は、約2年のラグをおいて、国内生産比率の増大をもたらすということが見て取れます。(p.37)


こうした統計の見方などで本書は参考になる点が多々あった。



 こうして、いわゆるアベノミクス「第一の矢」の金融緩和によって、輸出と設備投資が増加して、もっぱらそれに支えられて景気回復が進められてきたというのが、ここしばらくの動きだったと言えるでしょう。
 その一方で、消費税増税で消費は低迷し、政府支出も緊縮気味になっているために、しっかりした内需に支えられない、弱々しい景気回復になってしまいました。(p.41)


アクセルとブレーキを同時に踏んでいるようなものだというわけだ。ただ、私から見て本書の理論に欠けているのは、人口の動きを加味していないところにあるように思われる。総人口または生産年齢人口が減少へ向かっていることが自動的に需要を伸び悩ませる要因の一つであり、全体の経済成長を鈍らせる働きをしている点も加味して説明を行って欲しいところである。



それに、後でもふれますが、世界の景気が悪い中で日本も景気が悪くなったのならば、有権者にはかえって、野党に経済運営を任せるのを恐れる気持ちが働くのが自然です。(p.42)


このあたりのことを考慮に入れると、著者の意見とは若干異なるが、私としては次のように考える。

ある意味ではもはや安倍政権はそれほど景気対策を本気でやらなくてもよい段階に入っているのではないだろうか。メディアに対しては十分に対策を施して(飼い慣らして)おり、よほどの問題がない限り安倍政権が強く叩かれることはない状態となっているため、あとはメディアに攻撃材料を与えないように口封じを続けれいれば、安倍政権としては次の参院選でも勝利は確実と計算しているのではないだろうか。



 官邸のしかける情報戦というものは、政権側に都合よく見える情報を流すものばかりではない、ということに注意しなければならないと思います。政権側は、一方では大衆向けに、ちょっとしたことをとらえては「アベノミクスは成果を上げている」という宣伝情報を流しますが、他方では敵側に「つぶれる、つぶれる」と言わせる作戦も考えていると思います。(p.53-54)


なるほど。この点から見ても、本書の提案するように金融緩和や政府支出が足りないと批判する方が安全な方法だというわけだ。



 これからだんだん説明していきますが、景気拡大が不充分な間は、日銀の緩和マネーで政府支出しても問題は生じません。民間から無理に借金したり増税したりして、わざわざ総需要の足を引っぱる必要はないのです。(p.99)


この件に関する説明が分かりやすくなされていたことが本書から得た大きな収穫だった。

ただ、それらの説明もやや合理主義的すぎる発想が前提されている部分があり、景気のフェイズが変わった時に適切に政策を変えられるかといったところには多少の不安がある(いかにインフレターゲットで定めておくとしても、その時の総裁が著者と同じ考え方であるとは限らない)。



 2017年4月に予定されている消費税10%への引き上げは、確実に景気を後退させる要因なので、安倍さんを攻撃する側にとっては有利な材料です。民主党が消費税引き上げを決めたことをはっきり自己批判して、引き上げ反対の立場に立つならば、支持率は大きく上がることと思います。
 たしかに、将来完全雇用が達成されてインフレ気味の時代が来れば、増税が必要になると思います。しかしそのときも、消費税という手段を使うことは適切な方法とは思えません
 よく言われる、貧しい人ほど負担が大きい「逆進的」と言われる性質があることは、その理由のひとつです。でもそれだけではありません。そもそも消費税で税収をまかなうことの意義が、人々の消費を減らすことにあるからです。(p.221)


この最後の説明は腑に落ちた。論理としては目的論的な面もあるが、この場合は消費が増税分だけ減っているというデータの裏付けもあり、目的と効果が一致しているからである。

少なくとも日本では需要不足が経済の足を引っぱっているものであり、これは今後しばらくの間は変わらないと見るべきである。そうであれば、消費税という手段は適切ではないということになる。例えば所得税や法人税、さらにはピケティが言うような資産課税(富裕税)のような税で累進性を高める手段が適切である。

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