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アヴェスターにはこう書いている?
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田崎史郎 『安倍官邸の正体』

 情報番組は報道番組よりお世論形成に大きな影響を与える。(p.69)


政治に関心が高い人々は、報道番組を熱心に見る傾向が強そうだが、むしろ、その他の情報と混じって面白おかしく、かつ、単純化しすぎるほど「わかりやすい」情報番組の影響力の方が大きいというのは重要だと思う。ある意味、現在の選挙制度の下では、それほど強い支持を受けていない政党が国会では非常に多くの議席を得ることができ、与党になってしまえば、官邸に集中された権力によってかなりのことが好き勝手にできてしまうという状態になっていることを考えると、野党の側としては情報番組の影響力を利用することが重要な手段の一つになりうるはずである。この点に気づくべきではないか。むしろ、自民党のメディア操作の方がこちらに影響を既に及ぼしているのではないか、という危惧を覚える。(野党が活用することには問題はないが、与党がメディアを自身のために操作するのは言論・報道の自由や知る権利などの観点から非常に問題があると考える。)



 官邸から見た自民党の雰囲気について、官邸スタッフは一次政権と比較してこう見る。
「決定的な違いは派閥勢力、対抗勢力があるかどうかだ。一次政権の時は派閥の長老がいたが、自民党が世代交代して圧倒的に強い人がいない」(p.77)


なるほど。第一次安倍政権と第二次政権では、自民党の党内の力関係も変わっており、安倍が力をつけたというより、強い長老たちがいなくなったということが安倍政権にとって有利な条件となっている、ということか。



ダブル辞任になったのではなく、あえてダブル辞任にした、いわばマネジメントされ、打撃を最小限に抑え込む辞任劇だと思ったからだ。実際、閣僚辞任の衝撃は一度で済んだ。(p.85)


2014年の小渕優子が政治資金収支報告書の問題で、また、松島みどりがうちわ配布問題で辞任したが、同時に辞任したのは、あえて政権へのダメージを最小限に管理した結果だったという。

第一次政権で無様な失敗を繰り返した安倍晋三だが、その「お友達スタッフ」たちも同時に皆がその失敗を経験しているということが第二次政権で活かされているわけだ。政権側がマスメディアの特性などに注意を払った対応になっていることに鑑み、マスメディアは政治権力に利用されないために動き方を変える必要があるように思われる。



「私がやりたいことと、国民がまずこれをやってくれということが、必ずしも一致していなかった。そのことがしっかり見えていなかった。私が一番反省しているのは、その点です」(p.130)


安倍晋三のこの自己分析は基本的に妥当なものだ。

ただ、難を言えば、安倍がやりたい積極的な軍事大国化政策と国民が「まず」これをやってほしいことが一致していないだけではなく、安倍がやりたいことを多くの国民はむしろやってほしくないと考えているというところまで語るべきだ。ある意味、そのことを安倍は理解していると思われる。だから96条改憲、憲法解釈の変更による集団的自衛権行使などという姑息な手段や違法な手段に訴えなければ安倍がやりたいことは実現できないと考えているのだろう。

安倍の考え方がはっきりと分かりやすく語られることがあれば、そのことは自ずと明らかになるのだが、そのことを知っているが故に、安倍は国民を騙して裏口入学を繰り返す。極めて悪質だと言わざるを得ない。



 安倍が経済政策重視に大きく傾くのは11年3月11日の東日本大震災後のことである。一次、二次政権で内閣広報官を務めた長谷川榮一は同年3月下旬、「集団的自衛権や憲法も大事だが、これからは経済、くらしですよ」と進言した。それからしばらくして、自民党衆院議員・山本幸三が大震災の復興財源に国債を発行する構想に反対して、安倍を会長に、山本が幹事長を務める議員連盟「増税によらない復興財源を求める会」、「日銀法改正でデフレ・円高を解消する会」という勉強会を立ち上げた。
 ここで、安倍は日銀副総裁・岩田規久男、日本経済研究センター理事長・岩田一政(元日銀副総裁)、内閣官房参与・浜田宏一(米イェール大学名誉教授)、政策研究大学院大学教授・伊藤隆俊らとの接点ができた。安倍はそれ以前から内閣官房参与・本田悦郎(静岡県立大学教授)、嘉悦大学教授・高橋洋一、元日銀審議委員・中原伸之らと付き合っている。いずれも適度なインフレを主張する「リフレ派」と呼ばれる人たちだ。
 安倍はこの人たちとの交流を通じて、「日本経済の最大課題はデフレからの脱却」と確信するようになった。(p.132-133)


大震災が起きたことによって復興という問題が生じ、ここから経済や財政に関する問題に取り組む中でリフレ派の人々との接点ができ、現在の経済政策を練っていくことになったということか。

なお、ここでは「経済政策重視に大きく傾く」と書かれており、この引用文の少し前では、著者は安倍は「戦後レジームからの脱却」などの「美しい国」路線から経済政策を最重要政策に据えたとしているが、この見立ては誤っていると見るべきだろう。安倍にとっての目的は「戦後レジームからの脱却」であることに変わりはなく、そのための支持率や安定的な政治力を発揮するための手段として経済政策を掲げたり実施するという関係に過ぎない。その意味では安倍にとっての最重要政策は今でも「戦後レジームからの脱却」であり憲法改正だと考えるべきだろう。なぜならば、この路線に繋がることは(96条改正の議論を除くと)かなり強引に進めているからである。(例えば、日本版NSCと特定秘密保護法、集団的自衛権の憲法解釈変更の閣議決定、安保関連法の強行採決。)

それにしても、東日本大震災という未曽有の大災害を前にして、原発事故とそれに波及する避難生活などに苦しむ人々が多くいる中、原発再稼働を推進し、そうした人びとの復興のために税による再配分を拒否し、金融政策という人びとの生活からやや離れた手段によって一部の人々を富ませることによって経済が良くなったと思わせるような政策に関心を深めていったというあたりに、人権や個人の生活の尊重などは顧みず、自身と一体化した「国家」を最優先し、その「国家」を「強く」することにしか関心がない、といった安倍晋三という人間のメンタリティが見て取れるように思われる。



 こうした日程をこなしながら、午前7時から8時まで、正午から午後1時まで、夜は7時から8時半まで、8時半すぎから10時まで――と、1日4回、官僚以外の政治家、経済人、有識者、メディアと話す時間をつくっている。会うメディアは新聞、テレビ、通信社だけでなく、週刊誌、夕刊紙まで実に幅広い。
 政権批判、あるいは菅個人への批判が案外少ないのは、菅のたゆまぬ努力の賜物かもしれない。記者の習性として情報過疎になると狂暴になるが、一定の情報を与えられていると案外、静かである。(p.181)


記者の習性についての洞察は確かにそうなのだろうと思わされる。ここでもマスメディアは政治権力に飼い慣らされているように思われ、違和感や危機感を感じる。

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