アヴェスターにはこう書いている?
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中野晃一 『右傾化する日本政治』(その1)

旧右派連合と相当程度政策的立ち位置の重なる民社党は、実は結党当初、左派勢力を弱めることを狙ったアメリカ中央情報局(CIA)から秘密裏に資金援助を受けていたことが、今日では明らかになっている(2015年2月22日、共同通信)。(p.41)


民主社会党が社会党から分裂して結党したのは1960年のことであった。アメリカによる各国への介入は、さまざまな国に対して行われていたが、日本も同様であった。こうした事実はもっと広く知られるべきである。



 ところで巧みなメディア戦略などで都市部の無党派層の「柔らかい支持」の調達におおむね成功した小泉であったが、その構造改革路線は旧右派連合の伝統的支持基盤を崩すことによって自民党の固定票を危うくするものであったことは間違いない。そうしたなかで小選挙区における創価学会票の重みが自民党候補者にとっても相対的に増していくと同時に、日本会議に結集したような宗教右派組織などの国家主義的な情念動員も利益誘導にとって代わるものとして重要になっていった。(p.125-126)


新自由主義とされる小泉構造改革は、かえって自民党を公明党との連立を不可欠なものとし、復古的国家主義への傾斜を強める方向にも作用したというのは極めて大きな問題であると同時に興味深い現象でもある。



 政治家としての安倍のキャリアは、野党議員として始まった。そればかりか自民党が下野する直前には駆け込みで河野談話が発表され、細川新首相は「侵略戦争」と発言しており、ようやく自民党が政権復帰を遂げたのは社会党の村山を担いでのことであった。戦後50周年の国会不戦決議に安倍は最前線に立って反対し欠席するも、その代わり村山談話を閣議決定されてしまう。その後のアジア女性基金、中学歴史教科書全社での記述というように、「慰安婦」問題においても安倍は「敗北」の連続を味わった。のちに「日本を、取り戻す。」を選挙スローガンとしたのは、民主党から政権を奪還しなくてはならないという決意を示しただけではなかったのである。そうした安倍が1997年からの歴史修正主義バックラッシュの若手旗手の一人となったことについては既に第二章でふれた通りである。
 ……(中略)……。
 こうして徹頭徹尾「被害者意識」に裏打ちされた安倍やその盟友たちポスト冷戦新世代の復古的国家主義は、皇国日本が近代化の過程で戦ったすべての戦争は「国を安んずる」ため(安国/靖国)すなわち平和のため、自存自衛のための戦争であったとする「靖国史観」の「被害者意識」(中野「ヤスクニ問題とむきあう」394-401頁)と完全な一致を見たわけである。(p.134-136)


復古的国家主義が被害者意識に裏打ちされているという指摘は鋭い。ネトウヨやヘイトスピーチ団体などが中国や朝鮮などを蔑視しながら敵視するのも、それらの国からの被害を受けていると思い込んでいるからであろう。

2つ前のエントリーで取り上げた『言論抑圧 矢内原事件の構図』でも、戦前の極右言論人、蓑田胸喜の被害者意識について指摘されていたとおりであり、戦前の極右と現在の極右は考え方や感じ方などが非常に似ていると思われる。

なお、安倍晋三の政治家としてのキャリアの初期には彼にとって敗北の連続であったという指摘も興味深い。安倍晋三が戦後50年の国会不戦決議に反対していたということは銘記されるべきであり、不戦決議を成立させられなかったため村山談話という形がとられたという点も見逃すべきではない。安倍はこうしたいわくのある村山談話を、戦後70年談話で骨抜きにするつもりだったと思われるが、安保法案の審議によって支持率なども下がったため、彼が望んでいたほどにははっきりと否定できなかったのではないか(それでも明らかに村山談話よりは謝罪や反省の程度を下げているのは確かである)。



はっきりいってしまえば、安全保障が守るとする対象が国民国家からグローバル企業に変わっているわけだが、これを覆い隠すためにことさらにナショナリズムの煽動が行なわれるようになったことを見逃すことはできない。(p.138-139)


安全保障により守られるのは国民ではなくグローバル企業(の利益)であるというのは、事柄の核心を突いた認識である。

昨今の安全保障の議論について言うと、武力攻撃がなくても存立危機事態であると政府が認定すれば武力行使ができるようにしたいというのが安倍政権の主張であるが、これが意図していることの一つは経済的権益(地下資源など)を守るために軍事力を利用したいということであろう。ホルムズ海峡の機雷封鎖といった荒唐無稽な例を出して来て説明しようとしていたのは、経済活動の妨げになる事態や経済的権益が侵される事態になれば軍事力を行使できるように、ということである。



 こうして民主党への支持がメルトダウンを起こし、多党乱立、低投票率となった結果、自民党は2012年の政権復帰の際に2009年に惨敗・下野したときよりも200万票以上(比例代表制)減らしたにもかかわらず、小選挙区制の「マジック」によって議席数上での圧勝を得たのであった。
 いうなれば、オルタナティブとして育ったはずであった民主党が有権者に忌避されつづけ、多党乱立状態のなかうんざりした有権者が投票所に向わなければ、積極的な支持を獲得せずとも自民党は勝ちつづけることができる政治システムができあがったのである。(p.149)


低投票率の際には公明党との連立が自民党に極めて有利に働いているということも付け加えた方が良いだろう。



 実際のところ、棄権者も母数に入れた全有権者のうちどれだけの人が比例区で自民党ないし自民党の候補者に入れたかを計算すると(絶対得票率)、2012、2013、2014年の3回の国政選挙で16%から17.7%の間でほとんど動いておらず、これは森政権での2000年衆議院選挙での16.9%、小泉が民主党に後れをとった2004年参議院選挙の16.4%、第一次安倍政権がつまずいた2007年参議院選挙の16%、麻生で民主党に政権を奪われたときの2009年衆議院選挙の18.1%とほとんど変わらないのである。
 つまり自民党はおよそ6人に1人の有権者にしか積極的に支持を受けていないのであるが、有効な対抗勢力が存在しない今や、自公合わせて衆議院で三分の二、参議院で過半数を確保できるのである。右傾化した有権者が安倍の再登板を渇望した、というわけではなかったことは、投票率と自民党の得票数の低迷に表れている。(p.150)


自民党を積極的には支持しない6分の5の人の多くが小選挙区制では不満を抱くことになる。不満は無関心の方向に向かう要因にもなる。



 政権側からのアベノミクスについての情報発信は、国政選挙の前に増大する顕著な傾向を示し、メディアは知って知らずかその都度政権の争点設定(あるいは争点隠し)に協力した。アベノミクスの最大のポイントは、橋本行革で実施された「財金分離」の一環として打ち立てられた日本銀行の独立性を事実上撤回し、政府と直接連携し2年で2%のインフレ目標を「公約」に掲げた黒田東彦を総裁に据え、大規模な量的・質的金融緩和に乗り出し、円安・株高を仕掛けたところにあった。その後、年金の株式運用比率拡大も加わり、いよいよ「官製相場」の色彩を強めつつ、2015年4月に日経平均株価が15年ぶりに2万円台を回復した。
 結局8%への消費税増税などの影響もあり、このインフレ目標は未達成となったが、財界がアベノミクスによって大いに潤ったのは事実であり、「トリクルダウン」がこれまでのところ不発に終わり実質賃金が低迷するなか、財界と安倍自民党の蜜月は続いている。(p.156-157)


財界が金融緩和による円安・株高によって潤うため、財界のグローバル企業などをスポンサーとするマスコミもその意向に逆らえず政権の争点隠しに加担したということだろう。安倍晋三がメディアの個別インタビューなどに応じたり、メディアのトップたちとしばしば会食したりして懐柔を図り、マスコミがその術中にはまってきたということだろう。

グローバル企業の利益のために政府は国民を犠牲にする、特に安倍政権はその傾向が突出しているということは覚えておいた方がよい。




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