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アヴェスターにはこう書いている?
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「ツァラトゥストラはこう言っている?」の姉妹編。日々読んでいる本から気になった箇所をピックアップして自由にコメントするブログ。

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田之倉稔 『ファシズムと文化』

 マスカーニは裕福な音楽家の家に生まれ育ったわけではなかった。・・・(中略)・・・。音楽によって功名をえようとした彼にとって、ファシスト体制は自分がなりあがる絶好の機会であった。政治的な信条よりも、音楽家としての自分が社会的階層の上部に位置することを求めた。(p.42)



こうした一種の「利益誘導」によって、芸術家たちもファシズムの体制に取り込まれていった。今の日本にもこういった人間は多いだろう。言論の世界を見ているだけでもそれは感じられる。




「秩序への回帰」と「正常化」はファシスト党の合言葉だった。(p.65)



現在の日本では「正常化」というのは、右翼ないし保守主義者が「右傾化」のことを呼ぶ呼称となっている感がある。彼らはこれがファシスト党の合言葉だったことを知っているのだろうか?

他方、「秩序への回帰」という言葉は、現在の日本ではそのままは使われていないと思う。しかし、「伝統」を重んじようとする主張がこれとほぼ重なる

この言説に対しては、私は幾つか不満がある。「伝統」と呼ばれるものの多くが、近年になって「創られたもの」であるということは、いまや常識だと思うが、それも知らずに伝統を語る者もまだ少なくはないようであること。また、「伝統」は長く続いたものではないと知っていながら、「創られた伝統」という考えを批判せずに、都合の悪いことには目をつぶって「伝統」ということが言われることである。

いずれにせよ、現在の日本の政治的言説がファシズム期のイタリアと通じるものがあるということだけは確かだと思われる。日本の右派でも、戦争を積極的にしようと思っている者はそれほど多くないとは思うが、もしそうだとすれば、彼らはこうしたファシズムとの類似がありながら、同じ過ちを日本は繰り返さない、ということを説得力を持って説明できるだろうか?私にはそれは難しいように思われる。




考えてみれば、建築は施主の意志を多かれ少なかれ尊重する。・・・(中略)・・・。芸術は裕福なメセナを必要とする。建築の場合でいえば、メセナは施主である。したがってファシスト体制下にあっては、建築家はメセナであり、施主である国家の意志を拒否することはできなかった。(p.78-79)



これはマスカーニについて引用した文章とほぼ同じような現象について述べている。それは繰り返さないが、確かに建築という芸術/技術は、絵画などと比べて莫大な費用が必要であるため、パトロンにより強く依存せざるをえない。実際に、例えば「ヨーロッパ」の建築史を見ても、代表的な様式、例えば、ロマネスク、ゴシック、ルネサンス、バロック、新古典主義などを見ると、そのパトロンに巨大な権力者がいることがわかる。

ロマネスクはクリュニー会やカトリック教会などが背景にあるし、ゴシックやルネサンスも教会や都市の富裕層によるものであり、バロックは反宗教改革を行ったカトリック教会によって用いられ、新古典主義は成立しつつあった「国民国家」の政府が関与したものが多い。少なくともモニュメンタルな建造物については、上記のように一応は言えるのではないか。

それらの建築が流行した地域では有力な勢力がパトロンになっていることがわかる。

そうなると、確かに引用文で言われているように、建築家には「保守的」であることを運命付けられてしまう面はありそうだ。しかし、「ツァラトゥストラはこう言っている?」の方でも述べたように、改革や革新的であることとは必ずしも矛盾しない。




近距離で活動した者、ある一定の距離をおいて活動した者、反権力へと転じた者という風に大きく分類できる。ファシスト体制崩壊後、その作品が超越的な価値を獲得していたり、ある種の先見性を内包していたりする芸術家がいた。いったい彼らは国家やイデオロギーとどうかかわっていたのか。(p.87)



興味深い問題である。問いのたて方は少し変える必要があるようにも思うが、考えるに値する。
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古典主義について

古典主義古典主義(こてんしゅぎ)は、ヨーロッパでギリシャ・ローマの古典古代の時代を理想と考え、その時代の学芸・文化を模範として仰ぐ傾向のこと。均整・調和などがその理想とされる。*イタリアのルネサンスは古典古代を復興しようとする文化運動であった。これは各国 デザインの杜【2007/02/13 07:05】