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アヴェスターにはこう書いている?
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稲垣佳世子、波多野誼余夫 『無気力の心理学 やりがいの条件』(その4)

 効力感をもつ最低限の条件は、無力感をもたずにすむこと、つまり生存をおびやかす諸要因を自らの努力によって取り除けるというところにある。その逆に、生存がたえずおびやかされる、たとえばいくら働いても腹一杯食べられるかどうかわからない、というのでは、効力感どころではない。これは、社会に十分な食物が供給されていないという場合だけではない。失業率が高く、いつ首を切られるかわからない、ひとたび失業すれば容易に仕事が見つからない、失業手当では暮していけない、などというのも、まさにこれにあたる病気になったときに医者にかかることができないなどというのも、やはり生存をおびやかす要因をみずからの努力によって除去できない場合の代表であろう
 いや、もっと恐ろしいのは戦争である。戦争にまきこまれたら最後、いつ命をおとすかもしれず、いくら自分が平和主義者であるといいはっても、そのことによって自分の身の安全は保障されないのである。
 幸いなことに、先進資本主義国の場合には、社会主義諸国の場合と同様、戦争を除き、これらの生物としての生存をおびやかす恐怖からは比較的自由である。われわれの住んでいる社会も、その意味で、効力感をもたらすのに最低の条件は満たしている、といえよう。
 人間の場合には、生存といっても、衣食住だけでなく、基本的人権が守られることが不可欠であるある思想や宗教のゆえに迫害されたり、体制を批判しただけで警察につかまったりするようでは、広い意味での生存がおびやかされていることになる。そうした現実を改革しえないとすれば、やはり無力感におちいらざるをえないだろう。しかし、先進資本主義諸国の場合、その「自由」にさまざまな枠がはめられていることは事実であるが、それが多くの人々を無力感に導くほどのものとは思われない。(p.132-134)



前の記事にも書いたが、この本が出たのは1981年である。この時代に日本に住んでいた著者たちは、「当時の日本の社会は無力感に陥るほど酷い社会ではない」と比較的楽観している。

しかし、2007年の日本に生きるわれわれがこれを読んだら、空恐ろしさを感じてしまうのは私だけではないだろう。

近年の日本で社会問題とされていることの多くは、この本の著者たちが無力感に導く社会として描く方向性を示しているからである。それに該当する箇所に下線をつけてみた。それについて、一応、順に見ていこう。

◆いくら働いても腹一杯食べられるかどうかわからない

これは、まさにワーキング・プアとして問題が表面化してきたことであり、また、年収300万円時代などと言われることもこうしたことである。


◆失業率が高く、いつ首を切られるかわからない、ひとたび失業すれば容易に仕事が見つからない、失業手当では暮していけない

これは特に非正規雇用の労働者の増加という問題として表れていることである。彼らの多くは、十分な労働条件が保障されておらず、常にこうした状況と隣り合わせであると言ってよい。


◆病気になったときに医者にかかることができない

これは国民健康保険を収めることができず、滞納者が増えたのに対して、保険証が停止されることなどの問題として表れている。

また、病気に限らず障害を持つ人にも当てはまる。障害者自立支援法という名の、障害者を支援しないための法律などによって、これまで受けられた生活のために必要なサービスが多大の費用がかかるために十分受けられない、などという問題としても表れている。

病気や障害は誰もが無関係ではない。いつでも誰でもそのようになる可能性があるのである。


◆いや、もっと恐ろしいのは戦争である

自衛隊のイラク派兵を何年も続けていること、米軍と自衛隊とがどんどん一体化していること、先日「防衛省」が誕生したこと、現政権、それも首相が憲法改正を声高に叫んでいること、北朝鮮のミサイルや核実験に対して執拗に強硬姿勢をとることで、敵対関係を強めていること(これは攻撃される可能性がそれだけ高まるということでもある)、核兵器保有に向けた動き(検討すべきという一部の政治家の声)など、軍事的な活動を拡大しようという動きが最近多すぎる

その上、近隣諸国との関係は良好とは言いがたく、国際社会からも孤立気味(先日の首相の欧州訪問での各国の醒めた対応なども含めて)ときている。

戦争を恐れなければいけない時代に近づきつつあると感じる人は、現代の日本には多い。(世論調査でも増加傾向)


◆ある思想や宗教のゆえに迫害されたり、体制を批判しただけで警察につかまったりする

近年、国会で審議されてきた共謀罪などは、まさにこれであろう。次の通常国会で共謀罪の成立を首相が指示したという。それに、弁護士が警察に密告することを義務づける制度などまでつくろうとしているらしい。

そして、忘れてはならないのは昨年の末に成立した教育基本法である。政治が教育の場に介入し、さらに道徳規範までも押し付けることを正当化するような恐ろしい法律が既に成立してしまっている。「愛国的」でない思想が迫害の対象となることにもなりかねない。

このように日本における基本的人権は確実に削ぎ落とされてきている


今年の通常国会を何とか乗り切り、参院選で与野党逆転ができれば、多少なりとも風向きが変わる可能性があるし、もし、方向が変わらないとしても、進む速度が遅くなる可能性がある。(悪化する進行速度を低くできる。差し当たりの応急処置による延命。)

安倍政権は周辺のほとんどが極右の人脈で構成された歪んだ政権なので、民主党のタカ派が相対的に力を失い、小沢代表がやや左寄りのスタンスを持っている現状を考慮すれば、少なくともそこまでは言える。

その意味で、これから半年間は日本の社会状況を方向付ける極めて重要な期間であると言わざるを得ない。ここで自民党が負けなければ、本書が示したように、日本の社会は極めて活力のない社会になっていくことが予想される。
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テーマ:読書メモ - ジャンル:本・雑誌

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