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アヴェスターにはこう書いている?
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H.フォション『西欧の芸術1 ロマネスク』

「少なくとも建築については、フランス北東部、特にシャンパーニュ地方やロレーヌの辺境地帯、カペー王家の領地でも事情は同じであった。ムーズ河流域のカロリンガ芸術のいくつかの大中心地からさして離れていないこれらの地方は、カロリンガ的精神に溢れ、一般にアーケード状装飾と平帯装飾に対して反抗的な地方であった。
・・・(中略)・・・
 したがって、11世紀初頭以来すでに、西欧の建築の世界にはひとつの北方圏が存在していたことになる。初期ロマネスク芸術の典型的な特徴、すなわちアーケード状装飾がきわめて疎らにしか浸透していなかったので、初期ロマネスク芸術とは全く縁のない、かといってカロリンガ時代の方式をただ受身的に繰り返して生き永らえているということもできない建築がおこなわれていたのである。」p.53-54



以上、アンリ・フォションの『西欧の芸術1 ロマネスク』からの引用である。

フォションはフランスの北東部がアーケードに対して「反抗的」であったとして、「フランス北東部」が「自ら主体的に」アーケードを選択しなかったかのように語っている。

私はこうした見方には与しない。恐らくこの地域にアーケードが(ほとんど?)なかったのは確かなのだろうと私も考える。そのこと自体はフォションと私の見解の相違はない。しかし、それの持つ意味が大きく異なっている。

私見では次のように読む。

アーケードの基本技術はアーチであるが、これこそローマ帝国の遺産であって、フランス北東部にはその遺産が継承されなかったことを示しているに過ぎない。建築に限らずローマの遺産は、アルプス以北にはそれほど目ぼしいものは残らず、地中海沿岸と東の地域にもたらされたのである。

フォションのような見解を支持しない理由は幾つかある。

一つは、11世紀に至るまでの経済動向の推移からして、フォションの考えはある種の不自然さを抱えてしまうということである。

ローマ帝国の時代以前からレヴァントとアルプス以北とでは常に経済的水準が決定的に異なっており、学問、技術、社会制度、社会的インフラストラクチャー等、様々な面で東の方が優れていたことがわかっている。そして、建築ではこれらの地域でアーチが使用されていた。実際、アーチは高度な技術を要する。

高度な技術は社会経済が活発な地域でなければ維持できない。一般に高度な技術を開発したり使用すること自体、それを維持するためには相応の条件が必要だからである。

そう考えると、単に11世紀初頭のフランス北東部は(レヴァントなどと比較して)それほど経済的な水準が高くなく、他の地域との人的交流も少なかったために、当時における高度な技術を受け入れることができず、それ以前の水準の技術を利用し続けるほかなかった、と考えるほうが無理がないように思われるのである。

また、フォションのような説明にはもう一つ重大な欠点がある。何らかの技術などを受け入れる主体が、なぜそれを受け入れなかったのか、説明しなければならない。上の文脈で言えば「どうしてフランス北東部はアーケード状装飾に対して反抗的だったのか」を説明しなければならない。

従来、こうした場合にしばしば持ち出されてきたのは「文化」による説明である。しかし、これもまた多いに疑問を呼び起こすものである。なぜそのような文化が育まれたのかを説明しなければならなくなるのである。

さらには、どうして「フランス北東部」をひとまとまりとして扱えるのかという問題が生じる。建築様式だけを見ていれば、11世紀のこの地域にはまとまりがあったかもしれないが、別のものを見ればこの地域の外部も含めて一つの世界と見なすことがあるに違いない。それをどう説明するか?

以上の言及で分かるように、これでは説明にならないのである。一般に「文化」による説明は説明ではない

とりあえず、時間と体力の都合上、この一文についてのコメントはこれくらいにしておく。
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