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アヴェスターにはこう書いている?
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今村寛 『自治体の“台所”事情 “財政が厳しい”ってどういうこと?』(その2)

 先ほど福岡市のこれまでの借金のグラフでみたように、1993年(平成5年)ごろから2004年(平成16年)ごろまでに大量に発行した市債の償還が終わるのは2034年以降です。それまでは公債費は1千億円程度で高止まりすることになります。(p.54)


これは福岡市に限らずほとんどの自治体が同じ状況と思われる。これが事実だとすると、この公債費の累積は自治体の政策の結果なのではなく、中央政府の政策の結果であるとする方が遥かに妥当性があるということが分かるだろう。そして、実際にそうなのだ。



 ここまで「扶助費」「公債費」「人件費」の順に義務的経費の将来見通しを確認してきましたが、このほかに自治体の将来に大きな負担となってくるのが「公共施設」です。先ほど福岡市の借金の状況をご説明した際に、先輩たちがたくさんつくって遺してくれた立派な社会資本、公共施設のことをお話ししましたが、そのたくさんの公共施設が今後自治体の財政に影を落とすことになります。
 ……(中略)……。
 そこで、福岡市では公共施設のアセットマネジメントに力を入れています。計画的に修繕し、壊れる前に予防的な対応を図るアセットマネジメントで施設の長寿命化を図る実行計画を策定しました(図16)。(p.55-57)


この問題は福岡市に限ったことではないし、自治体や行政だけに限ったことではない。高度成長期に急速に整備されてきたインフラが、その耐用年数が近づいてきている。私が特に懸念するのは水道だが、それ以外にも自治体庁舎の老朽化も自治体財政が悪化(硬直化)している状況では対応しきれない課題となってきているのではないか。



図17を見てわかるように、4千億円もの自由に使えるお金がありながら、そのほとんどが「経常的経費」に充てられ、新たな政策を推進する「政策的経費」には10%も充当されていません。
 その「政策的経費」に充当できる一般財源がどんどん減っていく。新たな政策への投資ができなくなる。これが自治体の「お金がない」ということの正体なのです。(p.59)


この事実は財政にある程度の関心を持っている人であれば、誰でも知っているというか気づいてはいることである。ただ、その含意をどれだけ深く理解しているかとなると、怪しくなってくる。本書は、ここで述べられていることの含意を明確に把握できる手助けになるという点にひとつの意義があるように思う。この点は以下のいくつかの引用文の個所などにも明確に出ている。



 講座でよく「どこまで財政健全化すればいいのか」「どういう状態になれば財政健全化が達成できたと言えるのか」という質問をいただきます。
 非常にいい質問です。私は即座に答えます。「財政健全化は目的ではなく手段です。」と。


財政健全化の指標とされるものは確かにいろいろある。財政力指数や経常収支比率などがまず思い浮かぶが、こうした指標を知っていると、むしろこれらの指標がどの程度の数字になればよいのかということで財政健全化を考えてしまいがちである。しかし、それは本当にシンプルで重要なポイント、すなわち「財政健全化は目的ではなく手段である」ことを忘れさせてしまうものである。

このポイントを押さえながら考えるやり方が次の個所で述べられている「ビルド&スクラップ」である。



 まずやらなければいけないこと、重要な取り組みの実施(ビルド)を企て、すでに行っている施策事業がその新たな取り組みよりも優先順位が高いか低いかを判断しながら、これまで正当化されていた既存事業の優先順位を並べ替え、現在の社会環境や時代の要請に応じた順位へと「最適化」する。その結果、廃止縮小(スクラップ)を余儀なくされるものが現れます。これが「ビルド&スクラップ」と呼んでいる財政健全化の手法です。(p.111)


このアイディアは非常にシンプルだが重要なもので、財政健全化とは目的ではなく手段であるということを明確に理解した計画の立て方である。



財政健全化は目的ではなく手法。新しいことをやるために必要な財源を生み出すために行う事務事業の見直しですから、何を新たに取り組むのかが先に論じられるべきであって、見直しありき、予算削減前提で議論してはいけない、という考え方に立つべきだったのです。(p.113)


新自由主義的な立場から財政健全化を論じると、削減ありき、削減こそが目的(削減すればその結果として「効率化」といった目的が達成される)という考えになる。これは誤った考え方である。

ビルド&スクラップはそうした類の発想ではなく、目的論的な思想と相性が良い。


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今村寛 『自治体の“台所”事情 “財政が厳しい”ってどういうこと?』(その1)

 福岡市では2005年度(平成17年度)当初予算編成移行、「枠配分予算」という手法を導入しています。これは、あらかじめ推計した翌年度財源を一定のルールで各部局に予算編成前に配分し、その範囲内で自主的、自律的に部局単位の予算原案を作成してもらい、それを財政課が全体で束ねて調整するという仕組みです。(p.26-27)


本書では枠配分予算の実際の運用の苦労がいくらか語られているが、これは財政課がすべての予算を個別に査定するやり方よりは、財政課という限られた人員の部署で庁内全体の状況を把握できるはずがないという欠点があるのに対し、現場に近いところで予算を編成できるという利点があるように思われる。ただ、引用文でも「自主的、自律的」ということが言われているが、このことは裏を返せば、実施する個々の部局に「強い個人」であることを求めるものでもある。様々な負荷にさらされながらも適切な判断を下せる者であることを求められる。自治体には定期的な人事異動があり、十分な適性に欠ける人物が運用することになる可能性も考慮した制度設計が求められるように思われる。



私たちは、先輩方がつくり、残してくれた社会資本のおかげで、豊かな都市生活を送ることができているのです。

 その代わりに「お前も使うんだからお前も払え」と先輩方が遺してくれたのが、市の借金、市債残高です。資産があればその分負債があるのは当たり前。(p.45)


自治体の借金が社会資本整備を基本にしていることが前提されている。妥当な説明。参考になる。